楽器のバランス


楽器のバランスについて定義着けるのは大変難しいことだ。演奏される音楽の種類にもよるし、また、プレーヤー自身の歯並びなどによる、マウスピースの大きさの違いによって、楽器に伝達される振動の大きさに個人差が出てくる。より大きな振動を楽器に吹き込む人は軽い楽器は無理だろう。また逆に、浅いマウスピースでより細かい振動を楽器に吹き込む人はボビーシューモデルのような軽い楽器がよいと思われる。

 私の今までの経験で楽器におもりなどを着けた場合、ほとんど成功した覚えがない。私はヤマハの8335を使用しているが、三番抜き差しのストッパーのねじを着けるだけで楽器が振動しなくなる。したがって私はもちろん取り外して演奏している。

 話は少し横道にそれるが、先日テレビで視聴覚障害教室の放送を見る機会があった。直径80センチほどの「たらい」に水を張り、耳の聞こえない子供達にドラムのスティックを持たせ、「たらい」の「ふち」を叩かせていた。水面に波紋が出来るわけだが、小さな波紋の先に規則正しい大きな波紋が一つ出来る。その波紋を目で見せて振動と言うことを教えているのだ。私が注目したのは、規則正しい波紋の中に、同じ場所に大きな波紋が出来たことだ。

 そこでトランペットに戻るが、同じ場所に出来る大きな波紋が、トランペット本体の中のどこかに現れていると考えられる。その部分に支柱を立ててやると、唇にその振動が返ってこないと考えている。ではなぜ、唇に振動が返ってきては行けないのだろう。私の考えでは、唇から出る振動と同じ振動が返ってくれば打ち消し合うと考える。その時にトランペットは鳴らなくなるのである。その支柱は、決して無意味な「重り」とは意味が大きく違う。

 またリバーシブルの、主管抜き差しの効果についてであるが、これはあくまでも私だけの考えであるが、リバーシブルの効果は薄いと私は考えている。

 ではどのような効果があるかというと、リバーシブルにすることによって、気づかれた方は少ないと思うが、「延べ座」の位置が変わってくるのである。この「延べ座」とは本体とベルをつないでいる金具のことだ。主管抜き差しがリバーシブルのために、通常の延べ座の位置より、ピストンよりに着けることになる。このピストンよりに付けることによる効果が吹奏感を良くしていると考えられる。私の使っている楽器も、通常の主管抜き差しだが、ほぼリバーシブルの物と同じ位置に延べ座を着けなおしている。この効果は絶大だ。この延べ座を動かすというようなこともせずに、ただメーカー側から与えられた楽器を、文句を言いながら使っているようでは、日本のトランペットは進歩しないだろう。

 トランペットの支柱、延べ座、とりあえずこの2点が私の、楽器のバランスについての結論である。苦しんで吹くより支柱、延べ座を動かして楽にトランペットを吹こう。

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