楽器の選び方

トランペットを選ぶときはマウスピースと同じように、プレーをする音楽の種類によって当然変わってくる。
私が一番いいたいのは音色を重視するあまりに、耐久性、柔軟性を犠牲にする人が多いことだ。
 第一条件として「楽」に吹けるということをあげたい。この「楽」というのは、あくまでも本番で「楽」ということである。楽器店などで試奏して「楽」というのではない。もちろん練習の時も含む。あくまでも本番を重視したい。
 本番でよかった楽器には、必ずよいところがある。しかし同じ本番でも、会場の反響のしかた、観客の入り方、最後にその日の調子などがある。その日の調子といったが、ある程度経験年数のある人はべつだ。調子が悪いのはマウスピースまた楽器のアンバランスから発生することが多い。えてして、トランペット吹きは調子の悪さを全部自分のせいにするが、70パーセントがマウスピースと楽器のアンバランスが原因と考えられる。調子の悪さを自分のせいにしているうちは上達は見込めない。

 日本においてトランペットの歴史は大変浅いものである。まだまだ迷信のような話がちまたに飛び交っている。
戦後五十五年たって、ようやく私のように徹底的にトランペットとマウスピースを研究した者が現れてきた。私の場合はただ単にどこかにおもりをつけたり、ただ闇雲にしマウスピースのスロートを大きくしたりしたのではない。ちなみに私のベルは黄ベル、重さは212グラム(ベルのみ)だ。本体はゴールドメッキ仕上げ、ベルはラッカー仕上げである。これも伊達や酔狂でベルをラッカーにしたのではない。一度全部ゴールドにしたら鳴らなくなったのである。支柱は二本で手前がわは可動式である。支柱の位置もずいぶん悩んだ。
ベルと本体を結んでいるのを「のべざ」というが、それも、コルネットとほぼ同じ位置にしてある。偶然ではあるが「モネ」と同じである。トランペットでどうしても調子の悪い方は、マウスピースの条件を同じにしてコルネットで試していただきたい。支柱、のべ座、ベルの重量、これらは必ず音響工学的に計算の出来るものである。

もしこの記事を工業大学の方または、音響工学の方がごらんになったらご一報いただきたい。

(中川喜弘)

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