第三十二章
■ジャガイモサラダ■

 私たち中川一家は朝食も夕食もだいたい自室で自炊である。楠堂浩己にとっては、初日でなれないこともあって私たちの部屋に朝食を招待した。

 私は無類のジャガイモ好きだ。それがなぜだかは知らないが、たぶん子供時代と関係があるのだろう。
 今考えてみると、子供時代に白いご飯というのは、正月とクリスマスぐらいであった。別府のことであるからだいたいが主食は団子汁である。三度三度団子汁と言うわけにも行かず、よくジャガイモをふかしてマーガリンを着けて食べた。その名残が未だにあるのだろう。ふかしても唐揚げでも何にしてもジャガイモが好きなのである。

 そう言うわけで今回もジャガイモだけは、大量に買い込んでいる。とその話を楠堂浩己にしたら
 「実は私もジャガイモのサラダが大好きなんですよ」と言うことで、大いにイモサラダで話が盛り上がった。
 と言うことで今朝の朝食に楠堂浩己を招待した。招待というと格好がよいが、みそ汁に卵焼き、それに話が盛り上がったジャガイモサラダである。
 「僕はジャガイモのサラダを食べると妙に気が落ち着くんだ。中川さんもそうでしょう」そのようなことを言われたって、私の場合はただ好きで食べてるのであって、決して精神安定剤のために食べたつもりはない。否定するのもおかしいので
 「そう言われてみるとそんな気がする」等と話しながら急いで朝食をすました。
 
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