第四十三章
■残飯パーティー■
 
 コンサート3日目も無事に終わり、残すところ後一日となった。何回と無くスーパーマーケットに買い出しに行ったおかげで冷蔵庫の中には相当な食べ物が残っている。
 最後の夜はボランティアとのフェアウエルパーティー(お別れ会)が有るし、荷造りなども有るので冷蔵庫の中身の処分は今夜しかない。
 私の部屋に各自ありっりたけの飲み物、食料品、その他ありとあらゆるものを持ち寄ってパーティーを開くことになった。私たちが勝手に付けた名前だが、誰が言うでもなく結局あまりきれいな命名ではないが
 「残飯パーティー」と名付けられ深夜十二時頃から始まった。

 向里直樹の一家から届けられたのは特大のピザ。直径五十センチはゆうにある。我が冷蔵庫にはステーキ用の肉、大量の野菜類、私の好きなジャガイモのサラダ、巨大なアイスクリーム、英二郎が買い込んだ大量のダイエット飲料水、種々雑多である。

 まず焼かれたのが特大ピザ。問題は普段使い慣れないオーブンの火加減だ。二十分もするともくもくと煙が出てきた。なんと言ってもここはホテルの中だ。うっかりすると、火災報知器が鳴り出すおそれがある。急いで火加減を調節し窓を開けて煙を出す。
 流しで野菜を洗う者、コンロで肉を焼く者、高みの見物をしてビールを飲む奴。

 パーティーも佳境に入ろうとしている。
 「後一日でサクラメントジュビリーも終わり」と言う気持ちもあり、口々にこの2週間あまりの出来事で盛り上がる。お互いのプレーを讃えあったり、冷やかしたり、からかったりして時間のたつのも忘れた。
 もちろん話の中心はトラブルメーカー向里直樹。これは言うまでもないだろう。
 もし、向里直樹が今回参加していなかったら、違う意味で平凡なコンサートツアーとなっていただろう。
 「5月サクラメントに行きました。観客に喜んで貰いました。無事に帰り着きました。」
 話はここで終わっていたことだろう。

 くどいようだが、彼が起こした事件を並べると、出発する成田でのミュージックブック忘れ事件、ぎっくり腰事件、パスポート紛失事件、超特大粉チーズお土産事件、超特大ピザ無差別購入事件、帰りの飛行機で楽器手荷物断られ事件、そのほか小さな出来事を入れると、別に本が一冊書けそうだ。
 色々と事件を並べたが、彼が、ステージでギターを一発弾けばすべて帳消しである。
 話が盛り上がり、気が付いたら朝の四時だ。朝八時には起きなくてはならない。話したいことはまだあったが、今夜はこれで解散とした。

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